「あっ私よ。御影木の葉よ。久しぶりね」
 なぜか挨拶の方が後回しなのはとりあえず置いておく。
「久しぶりだね。叔母さん。元気にしてた?」
「…………………」
 なぜか返事が来ない。
「司、まさかもう忘れてたの? 私の事は」
 その声色には怒りが見え隠れしている。
「あ〜そうだったね。木の葉さん」
 木の葉は極端に叔母と呼ばれるのを嫌がる。これはまぁ女性なら当然とも言えるだろう。
「それで? 久々の電話は世間話しをするため?」
「それもあるけど、本題は違うわ。司に仕事の依頼を引き受けてほしいのよ」
「依頼? 内容は」
 司の雰囲気が一気に仕事モードに入る。
「私が理事をしているセレスティア学園が明日、入学式を迎える事になったの」
「セレスティア学園ってあの有名な?」
 セレスティア学園はセレブなお嬢様ばかりが通うお嬢様学校なのだ。それも男子禁制ではないのだが、全くと言っていいほど近寄る事はないある意味神聖な場所なのだ。
「そうよ。司以外はみんな可愛い女の子。嬉しいでしょ?」
「いや、まぁ嬉しいって言えば嬉しいけどさ」
 司とて健全な男の子である。可愛い女の子がたくさんいると聞けば嬉しくないわけがない。
 だがそれと仕事は別である。そこの区別が出来なければ一人前とは言えない。
「じゃあ決まりね。学園の場所は分かるでしょ? こっちに着いたら一度連絡ちょうだい。詳しい話しはその時しましょ。それじゃまたね?」
「ちょっ! 木の葉さん! 勝手に話しを決めないでください!」
 ツーツーツー………。
 すでに回線が切られており、司の怒鳴り声だけが屋上に響き渡る。
「あの人は全く。いっつも自分勝手なんだから」
 その上こっちが依頼を断る事など考えてもいないらしい。
 それはそれだけ信頼を置いていると言う裏付けとも取れる。
「……やれやれ。仕方ないっか」
 携帯電話をしまうと司は静かに空へと舞い上がって行く。
「んじゃ、行くとしますか!」
 自分に気合いを入れると一瞬にして司の姿がその場から消え去ったのであった。