木の葉の表情から今回の戦いがどれほどのものなのかは、簡単に想像する事が出来た。そのため二人の緊張感は否応なしに高まった。
「もうすぐ宗主と各分家の当主たちが、道を開けて下さるそうよ。二人とも、準備と覚悟はいいかしら? もう後戻りは出来ないわよ」
 その言葉に美凪は固唾を飲み込む。
「後戻りが出来ないんなら、いまさら覚悟を決める必要はないさ。準備ならもう出来てる」
 司の言葉には流石の木の葉も苦笑した。
「私も年を取ったみたいね。まさか司にそんな事を言われるなんて」
「もう引退を考えたらどうだい? 木の葉さん」
「ん〜………そうね。この戦いが終わったら考えるわ」
 自分の両親よりも実はかなり年上の、叔母を見て司は苦笑するしかなかった。
「なんだ? 随分とこっちは楽しそうじゃねえかよ。あっちはドンパチしてるってのによ」
 そこへ一人の男がやってきた。
「こ、これは宗主」
 男の姿を見て木の葉と美凪は片膝を付く。
 そう今司たちの前にいる男こそ、御影宗家の宗主であり司の父親である御影慶一郎だった。
「親父。どうしてここへ?」
「あん? お前らがあんまし遅いんで、びびってんじゃねえかと思ってよ。励ましに来たんじゃねえか。…だがその分じゃ無駄に緊張してるわけじゃなさそうだな」
「当然だろ? もう覚悟は出来てるんだ」
「ほう? その覚悟ってのはどんな覚悟だ? 戦う覚悟か?」
 慶一郎の言葉に司は静かに首を横に振る。
「戦う覚悟じゃない。生き抜く覚悟だ」
 真っ直ぐ自分の目を見る息子を見て、思わず嬉しくなった。
「立派な守護者の表情になったな」
「ああ。守りたい大事な人がいるから」
「神楽の娘か。はっ! どうやらお前を、木の葉のところに預けて正解だったみたいだな」
「最初はぶん殴ってやろうと思ってたけど…今は感謝してるよ」
「言うようになったじゃねえか。流石は俺の息子だな」
 豪快に笑うと慶一郎は真剣な表情へと戻る。
「これよりカオスを倒す。美凪と木の葉は司の援護をしてやれ」
「了解しました」
「……御意」
 美凪と木の葉は恭しく頭を下げる。
「これより総攻撃を開始する!」
 慶一郎の命令によっていよいよ本格的に、カオスとの戦いの火蓋が切って落とされた。