それは突然司の前に現れた。それは司と全く同じの背格好で、顔には白いノッペリとした仮面を付けていた。そして潜在魔力は司と同等かそれ以上のものだった。
「やあ初めまして…いや久しぶり、かな?」
 高度千メートル上空で二人は対峙していた。
「それは俺をおちょくってると、認識していいんだな?」
「それは少し誤解かな? 僕は誰よりも君に近い存在なのだから」
「お前が? 俺に? 笑わせんな。どこが似てるってんだよ」
「それを今言ったら詰まらないだろ? お楽しみは後に取っておくものだよ」
「ふざけんな!」
 司から溢れ出る膨大な魔力が荒れ狂う。
「そう。そういうところは僕とそっくりだよ」
 同じく仮面の男からも嵐のような魔力が、溢れ出た。
 司と仮面の男の魔力が衝突しあい、空間が歪み始める。
「ハハハッ! 楽しいね? そうだろ? そうだよね!」
「楽しかねえよ!」
 司の全力で突き出した拳を仮面の男は、軽々と片手で受け止めて見せた。
「そう慌てるなよ。僕も君に会えるのを待ちに待ったんだから。もっと楽しもうじゃないか」
「へっ! 言うじゃねえかよ。そこらかしこで悪さしてるやつが言う台詞じゃねえよな」
「そうだね。残念ながら退屈しのぎにもならなかったよ。やっぱり僕を満足させてくれるのは君だけだよ!」
 司の拳を払いのけ、追撃として雷撃を放つ。
「この程度で!」
 放たれた雷撃を裏拳で真上へと叩きのける。
「では次はこれだ」
 仮面の男の周囲に多数の火球が現れる。
「させっかよ!」
 司はすかさず水の矢を放ち火球に命中させる。
 すると水の矢が命中した火球は次々と水蒸気爆発を起こした。
「まさかこの程度で倒せるとは思ってないよね」
 凄まじい爆発の嵐の中でも、仮面の男は無傷でその場に佇んでいた。
「やっぱり君ならば楽しめそうだよ」
「ざけんな! 名前も名乗らないやつなんかと」
「おっと。これは失礼。僕は…そうだね。カオスと呼んでくれるかな? まぁ名前なんて僕には意味がないものだけどね」
「カオス…混沌、か」
「それじゃ今日はここまでだ。また会おう」
 カオスは空間転移でその場から消え去った。
 こうしてカオスと司の戦いが始まった。