お嬢様重奏曲!

「ねえ? 司君」
 いつもと同じように魔法の訓練をしているところに、刻羽が訪ねてきた。
「何ですか? 刻羽さん」
「もっと、こう…ちゃちゃっと魔法が使えるようになれないの?」
「ちゃちゃっと、ですか? そうですね。生れつき魔力がこもった何かを持っていれば、こんな訓練をしなくて済みます」
「それホント?」
 なぜか刻羽の目が輝く。それはまるで自分もそれに属する何かを、持っているかのように。
「ただそういう類は何かしらの発動条件がいるし、効果も自分じゃ決められないから一概にいいとは言えないけど」
「…そうなんだ」
「俺の知り合いに魔眼使いがいるけど、やっぱ苦労してるみたいだよ。結構強力な魔眼なのに」
「そっか……ちなみに聞くけど司君。私は」
「刻羽さんにはありませんからああ言うのは、血族の中で受け継がれていくものですから」
「ぶぅ。分かったよ。地道に努力すればいいんでしょ?」
 刻羽は頬を膨らませながら、訓練を再開させた。
 訓練を始めてからしばらく経つがまだ誰も一枚も破っていなかった。
 センスはあるのだから、一度分かれば順調にいくはずなのだ。しかしそう物事が上手くいかないのもまた人生である。
「司さん。何か上手く出来るアドバイスはありませんか?」
 さすがの薫も耐え切れなくなったのか、司に訪ねていた。
「う〜ん。こういうのは感覚だからね……じゃあこうしよう。今から俺が四属性の構成を構築するから、それを参考にするって言うのは?」
「司さんの、ですか?」
「それはナイスアイディアだね」
「司様の構成を直に拝見するのは初めてです」
「あ、私も見たいです」
「司の? ふん。宗家がどれほどのものか見せてもらおうじゃない」
「なんか面白そうアルね。私も見たいアルよ」
 なぜか魔法が使えないチャオランまで加わり、司の魔法講座が始まった。
「いいかい? 今までのようにただ物を動かしたりするのとは、全く別物なんだ。だからその構成を元に構築しちゃいけない。今から一つずつゆっくり見せるから、ちゃんと参考にする事。んじゃいくよ」
 司は精神を集中させ構成の構築を始めた。