お嬢様重奏曲!

 護衛が終わると、司はすぐにホテルへと戻り、地図を広げる。
「なんでこんな事が分からなかったんだろう」
 地図上ではやはり何も記載されていないが、地形や地層を調べ、予想は確信へと変わった。
 ホテルの屋上へと上がりもう一度、島全体に魔力のソナーを飛ばす。
 島には無く近くの海域にもましてや上空にも無ければ、残るは一つだけだった。
 そう横にも上にも無いのならば、後は下にあると言う事である。
「……ビンゴだな」
 地下に島全体を支える形で遺跡があった。
「ってどんだけでかいんだよ。これじゃ遺跡が沈んで、その上に島が出来たって感じだな。遺跡は見つかった。後は入口だが」
 さらに魔力のソナーを飛ばし捜索する。
 この島が遺跡の上に出来たのであれば、自動的に入口は海底と言う事になる。
「……見つけた」
 およそ水深二十メートルのところに、入口らしきものを見つけた。
「善は急げって言うし。あいつらがまた来る前に、ここを出るか」
 地図を片付け司は早速簡単な準備を済ませると、すぐさま部屋から空間転移で入口がある場所の水面に移動する。
「意外とホテルから近いな。ばれないうちに探索を始めよう」
 静かにゆっくりと司の体が、海の中へと沈んでいく。
 さすがは珊瑚が周囲に棲息しているだけあってか、海はとても澄んでいた。
「こりゃ絶景だな。薫さんたちにも見せてやりたいな」
 体の周りに風による膜を張っているので、当然呼吸も出来るし服も濡れる事はない。
「そろそろか」
 ひしひしと水圧を微かに感じながら、遺跡の入口のところまで無事到着した。
 門は崩れ落ちており、ぽっかりと大きな穴が空いていた。
「よほどここの主は人見知りだったんだな」
 司には空いて見えるのだが、穴には強力な幻術と認識を妨害する魔法がかけられていたのだ。
 これでは普通の人間はもちろん二流の魔法使いでも見付けられないだろう。
「うわ〜なんか面倒事に今首を突っ込もうとしてるぞ。俺」
 それでも遺跡の調査も依頼されている以上、中へ入らなくてはならなかった。
「……はぁ。んじゃ、お邪魔しま〜す」
 司は観念し遺跡の中へと入って行った。