「ちょっと待っててくださいね?」
 いざ部屋の前にたどり着くと薫は司と美琴を置いて、先に部屋の中へと消えて行った。
 多分部屋の整理をしているのだろう。
 薫とて年頃の女の子である。それぐらいは気になるのは当然だろう。
 しばらくして部屋の中からガシャングシャンドシャンと何かがぶつかり合う音が聞こえてきた。
「……………………」
 司は何か言おうとしたがそれを見た美琴が無言で首を振る。
「お待たせしました。どうぞ入ってください」
 部屋から出て来た薫の髪が妙に乱れているが、これには触れない方がいいだろう。
 それを察した美琴がため息交じりで薫の髪を直してあげていた。
 部屋の中に入ってみるとそこら中にヌイグルミが飾られており、かなりファンシーで女の子らしい部屋だった。
「今準備しますね?」
「あ〜ウチも手伝うからそう焦るんやない」
 一人テーブルの前でポツンと待たされた司は手持ち無沙汰でキッチンの方を覗き見ていた。
「お待ちどう様でした」
 盛りつけるだけだったらしくあっという間に次から次へと料理がテーブルの上に並べられていく。
 和洋中がごちゃまぜなのは美琴との合作だからだろうか?
 全て並べ終えたところで二人もテーブルの前に座る。
「御影さんのお口に合うか分かりませんが、どうぞ召し上がれ」
「んじゃ遠慮なく。いただきます」
 取りあえず目の前にあった卵焼きを一口。
 半熟のフワフワで卵本来の甘味と旨味がしっかりと引き出されていた。
「ど、どうですか?」
 不安そうに薫は司の顔を覗き込む。
「うん! これすんげぇ美味いよ! 神楽さんってホント料理が上手いんだな」
「本当ですか? 良かった」
 司の言葉を聞いて安心したのかホッと胸を撫で下ろしていた。
「美味いんは当然やろ? 今回はいつにも増して力が入ってたんやからな。なぁ? 薫」
 美琴が薫を見て悪戯っぽく笑って見せた。
「も、もう! 美琴! なんでそんな事言うの」
「なんでやろや? 分からへんの?」
「もう知らない! 御影さん、美琴なんてほっといて冷めないうちに食べましょ」
「あ〜ん。勘忍してや。な? 薫」
 こうして楽しい食事会が始まったのだった。