「さすがに周りが女の子だらけの中、男が混じってるってのは倫理的にまずくないか?」
「そないな事言うたら今かてそうやんか」
「あのなあ? だから俺は時々授業から外れてるだろうが」
 普段司は普通科目は一緒だが着付けや水泳などは、授業から外れていたのだ。これはさすがの木の葉も了承している。
「せや! だったらウチらがあっち言ってる間の安全はどないするん?」
「いくらなんでも、この学園はセキュリティは厳しいと思うぞ? 難だったら美凪を付けてもいいさ。あいつの実力は知ってるだろ?」
「……ぐっ。さすが手強い」
 口は得意な美琴だったが、やはり司の方が一枚上手だった。
「あ、あの。駄目…ですか?」
「こればっかりは薫さんの頼みでもねえ」
 同い年の癖に人生経験が豊富の司には、なかなか勝つ事が難しい。
 だから美琴は最後の手段に出た。
「みんな! 聞いてや! 司が臨海学校、一緒に行かへん言うねん!」
 美琴の怒鳴り声に教室内のざわめきが、気持ち悪いくらいピタリと止まる。そして次の瞬間、まるで雪崩のようにクラスメートが司に押し寄せて行った。
「ねえ! 嘘でしょ? 今の」
「私、絶対一緒に行くって思ってたのに!」
「せっかく御影君のために、新しい水着買ったのに」
「私たちに魅力を感じないの?」
 改めて確認するが、このセレスティア学園は、お金持ちのお嬢様が通う学校である。
 止めてくれると信じていた咲枝や桜子は顔を朱くさせ、成り行きを見守るだけであった。
「待て! お前らおかしいだろ! 女の子はそこ恥じてご遠慮願うとこだろ。普通は!」
「御影君なら別に……ねえ?」
「だよね〜?」
 さすがは女の子と言うべき連帯感で、満場一致する。
「ええやんか? ハーレムやで? ハーレム。男のロマンやろ」
「女の美琴が男のロマンを語るな」
「なんやねん。ノリ悪いやんか。女の子公認のハーレムなんてなかなかないで? しかも全員が金持ちの令嬢やで?」
「そりゃまあ俺だって嬉しい限りだが、御影の名前を背負っている以上はわきまえるとこはわきまえないと」
 なんとかその場は乗り切る事が出来たが、司はまだ団結した女の子の行動力を甘く見ていた。