夏もいよいよ本格的に暑くなって気た頃、司は机を影にして魔法でうちわをパタパタと扇いでいた。
 魔法をこんな使い方していると、昔はよく美凪に怒られたものだが今はいない。その上、クラスメートは自分が魔法使いだと言う事を知っているため気兼ねなく使えたりもする。
 そんな中、妙に周りがはしゃいでいる様に司は思えた。
 疑問に感じた司はちょうど側にいた美琴に、声をかける。
「なあ、美琴。なんか妙に教室の中が浮ついてる様に思えるんだが」
「はあ? 自分それ本気で言うてるん? 先々週に配ったウチの力作見てないんか?」
 もの凄い剣幕で睨まれた後、なぜか呆れられる。
「力作? なんだそれ」
「うわっ呆れた。毎週配られてる乙女通信やんかボケ!」
「あ〜確かそんなのもあったな」
 ボケかどうか知らないが確かにそれっぽいのが、配布されていたのをどうにか思い出す。
 しかし先週は記憶にあるが、先々週のは記憶にない。
 まあそもそもあの美琴が入った部活と言うのが、報道部だと言うのには驚いた。まさに天職そのものだったのだ。
「じゃあなんで知らへんねん」
「なんでって言われてもなあ?」
「美琴。司君はその時、お仕事だったんだよ」
「仕事? 確かにそんなんあったな」
「確かに先々週は三日くらい仕事で休んだな」
 二人の会話に薫が入り司をフォローする。
「んで? 先々週のお前にはとても似合わない乙女通信には、何が書いてあったんだ?」
「ほっとけ。そんなん言う司には教えたらん」
「もう! 司さんも美琴も。えっとですね? 来週から三日間臨海学校があるんです。場所は南海の小さな島だそうです。なんでも理事長の所有地とか」
「……なるほどねぇ」
 だから周りは落ち着かない様子なのだろう。
「んじゃその日は適当に仕事入れてもらうか」
 さすがに周りが女の子だらけの中、男がいるのはまずいだろう。
「え〜。どうしてですか?」
「え〜。どないしてやねん?」
 となぜか目の前の大財閥令嬢二人は、不服そうな表情を見せていた。
「いや。どうしてって」
 こんな事をいちいち説明しなくてはならないとは、さすがはお嬢様である。