「うぅ! 出来ない! つまんない!」
 突然刻羽がその場に寝転がる。
「収束と増幅は出来るのにその先が出来ない」
 手足をバタバタさせ、その姿は駄々っ子そのものだった。
「刻羽さん。そんな子供みたいに。それにそんなに足をバタバタさせると、下着が見えますよ?」
「いーもん。司君にだったら別に」
「あのねぇ……はぁ。悪い真夜ちゃん。魔法訓練の日はこっち来なくちゃ駄目みたいだ」
「ふふっ。構いません。頼んでいるのは、私の方ですし。それに私もこの日は楽しみにしてるんですよ?」
「そうかい? じゃあ真夜ちゃんの方は明日からでいいかな?」
「ちょっと! 司! 刻羽先輩をどうにかしてよもう」
 向こうの方で刻羽相手に美凪が苦戦していた。
「そうですね? 今は刻羽さんの方が先決ですよね」
「悪いな? ちょっと刻羽さん! あんまし美凪を困らせないで下さい」
 司は苦笑しながら刻羽の元へと向かう。
 刻羽は筋はいいのだが、とても飽きっぽい。
 咲枝はとにかくいろんな事を尋ね、吸収しているため飲み込みが一番早い。
 薫はどこで覚えたのか悪夢の王だとか滅びの道だとか、物々しい呪文を唱えている。
 これは後で美琴を懲らしめる必要が、あるだろう。
 横を見ると美凪が頭を抱え呻いている。まだ薫たちの扱いになれていないのだから、仕方ないだろう。
 チャオランはチャオランで何やらデータを取ると言う理由で、参加しているのだが今もノートパソコンのキーを高速で叩いている。
「うんうん。下地がある分真夜ちゃんが一番素直だね。助かるよ」
「い、いえ。私なんてそんな」
 謙遜するのはいいが、度が過ぎ引っ込み思案になっているのがネックになっている。
「司さん。いいですか?」
 そこへ薫がやってくる。
「呪文を唱えても、魔法が使えないんですけど」
「………どんな呪文ですか?」
「えっといくつかあるんですが、まずは黄昏れよりも暗き者、血の流れより…」
「ストップ! それ以上はある意味危険だから駄目!」
「では夜よりも暗き者、闇よりも深き者」
「それも駄目!」
 不思議そうに首を傾げる薫を見て、司は笑顔て美琴は絶対シバくと心の中で、強く決意するのであった。