まず家具を宙に浮かせ配置を考える。
「んっと………そうだなぁ。あれはあっちでそれはこっち。んでこれはここっと」
 人差し指だけを動かし宙に浮いている家具たちを次々と移動させていった。
 ある程度配置が完了したところで今度は自分の荷物を整理する。
「しっかしよ。使わなくなったって言ってたけどまだ全然使えるもんばっかじゃん。これだから金持ちってのは」
 ブツブツと愚痴りながらも荷物を整理していく。
 しかし自分の荷物などそれほど多くもないので、あっという間に終わってしまったのだ。
 片付けを開始してからまだ三十分くらいしか経っていない。
 これなら薫たちもまだ準備が整っていない事だろう。
「向こうの準備が出来たら呼びに来るだろうし。気長に待つか」
 ベッドに横になり薫たちが呼びに来るのを待つ事にした司であったが、次第に眠りの世界へと誘われてしまった。
 それからしばらく経って薫と美琴が再び屋根裏部屋へとやってきた。
「御影さん」
 コンコンと薫がドアをノックする。だが中から司の返事は返って来なかった。
「なんや? 返事してこえへんやんか? どないする?」
「……もしかしたらお片付けの最中に何かあったのかも! ほらっ中静かだし」
「いやいや何かって。そなあな事ないやろ普通」
「御影さん! 入りますよ」
 美琴の言葉を聞かずに薫はドアを開けて中へと入った。
「……………う、嘘?」
 中に入った薫が呆然と立ち尽くしているのを見て美琴も中へと入る。
「薫、どないしたん? ってこれはまた」
 美琴も部屋の中を見て驚いた。
 片付けを始めてからまだ一時間程度しか経っておらず、早過ぎたかもと二人で話していたのだがそんな事などまるっきり無かったのだ。
「……片付いてるやん」
「そう、だね? しかも拭き掃除までしてる」
 二人が言葉を失っている中、司一人が平和そうにベッドの上で寝息を立てていた。
「ともかく御影さんを起こしましょう」
「せやな? せっかく薫が司のために愛情込めて作った料理が冷めてまうさかいな」
「もう! そんなんじゃないってば」
 それほどまんざらでもないのか薫は顔を紅くさせ司の体を揺さぶったのだった。