さてどうしたものか? と司は考える。一通りの事は真夜が試しただろう。
 そもそも魔法とは八割方はイメージによるものだが、残りは知識によるものなのだ。つまりほとんど物理的に可能な事しか出来ない、と言うかしない。
 無理矢理に世界の理を弄り、均衡を乱すようでは魔法使い失格なのだ。
「ん〜。そうだなあ」
 並大抵の事ではチャオランは引かないだろう。
 ならば多少、理を弄るしかない。
「行くぞ」
 魔力を収束させ増幅させていく。普通の人間には見えないが、真夜には司が扱う尋常じゃないほど膨大な魔力が見えてしまう。
「うわ、うわ、うわ」
 司の魔力により空間が歪む。
「ちょっと触るぜ?」
 チャオランの頭に手を数秒触れると、今度はチャオランが用意した機械に手をかざす。
 するとゴロゴロと置かれた機械が一瞬にして消えたのだ。
「さあ今一瞬で消えた機械をこの場で、再び一瞬で復元させてみてくれ」
 司の言葉にチャオランの表情が強張る。
「今のは物質崩壊? いや何か違う……」
 チャオランは悔しそうに司を睨み付ける。
「今何したね! 教えるアル!」
「それは敗北宣言と見ていいのかな?」
「………ぐ、私の負けね」
「よっし!」
 司は機嫌良く、機械があった場所に再び手をかざす。すると何の前触れもなく、機械が何事も無かったように元に戻っていた。
「俺がやったのは物質崩壊じゃなく、時間の転位だ。残念だったな」
「時間? くう〜! 悔しいね! 個体レベルで時間移動出来るエネルギーの抽出に収束、制御まで出来るなんて!」
「ハッハッハ! それじゃ今回は俺の勝ちと言う事で。では行こうか?真夜ちゃん」
「え? ま、待ってください。御影先輩。またね? チャオ」
 司に呼ばれ真夜は慌てて司の背中を追いかけて行った。
「どうなされたんですか? 急に」
「一刻も早くあいつから逃げなくては」
「?」
 訳も分からず真夜はとりあえず、司の後を追いかける。
「あいつって誰の事かしら? 司」
「げっ! 美凪」
 司たちの目の前に胸のところで腕を組み、仁王立ちしている美凪がそこにいた。