「やれる物ったらこれくらいしかないから、やるよ」
 司が差し出したのはシルバーチェーンに、何とも不思議な光沢を放つ、宝石が付いたペンダントだった。
「うわぁ。とってもきれいですね?」
「見たことあらへん宝石やな?」
「どこか神秘的な雰囲気がありますね」
 マジマジと三人が見つめている中、美凪だけが驚いていた。
「ちょっ! 司、これって」
「おう。タリスマンだ。昔っからお守りとして、ずっと付けてたけど、美凪にやるよ」
「でもこれ、子供の頃から付けてたやつじゃないの」
「長年付けてたから、俺の魔力も多少付加されたかも知れないけど、まぁ我慢してくれ」
「こんな高価で大切なものもらえないわよ」
「高価ってどれくらいなん?」
 美琴が興味津々で尋ねてくる。
「出すとこに出せば桜塚グループが所有する、全ての株を倍額で買い占めても、お釣りがくらいって言えば分かります?」
 これにはさすがのお嬢様でも驚いていた。
「気にするなよ。俺からの気持ちだよ。もらってくれないか?」
 優しく微笑み問う。
「………卑怯よ。そんな表情されたら、受け取らないわけに、いかないじゃない」
「そっか。サンキュー」
 司から受け取ったタリスマンを美凪は早速付けてみた。
「……どうかな?」
 美凪は頬を少しだけ赤くさせる。
「ああ。とってもよく似合うよ。美凪」
「はい。とても可愛いですよ。美凪ちゃん」
「よく似合うてるけど、あれがあれば…」
「駄目ですよ? あれはとても大切なものなのですから」
「んな事くらい分かってるっちゅーねん!」
 美琴のツッコミで全員が幸せそうに、笑いあった。
 歓迎会も盛大に盛り上がり、終わった頃には消灯時間まであと僅かだった。
 部屋に戻った司は、二年になっても変わらない屋根裏部屋の窓から、夜空を眺めていた。
「短い一年だったな。問題は残りの二年で、あいつがいつ仕掛けてくるかだ」
 今まであいつには一族全員が悩まされていた。
 しかし、と司は思う。
「守護者の名に賭けて、俺の代であいつを叩いて見せる」
 護ると誓った顔を思い浮かべ、強い決意を胸に抱いたのだった。