お嬢様重奏曲!

「…………えっと。大丈夫か?」
 思っていた以上にきれいに回転し、見事に顔面から突っ込んでしまったため、司は不安そうに中国少女を覗き込む。
「フッフッフ…」
 突然の笑い声に司はその場から一歩引く。
「なかなかのクンフーね。さすがはかのセレスティア学園」
「「いやいやいや」」
 司と草むらの少女は声を揃え否定する。
「私の名前はフェイ・チャオランね。覚えておくよろし!」
 とチャオランは生き生きと名を名乗り、回れ右をして大講堂の方へと消えて行った。
「……なんなんだ? あの子は」
 とりあえず片方は一件落着したと判断し、今もなお草むらな中で佇んでいる少女に手を差し延べる。
「ほらっ。いつまでもそこに立ってないで」
 差し延べられた司の手を見て少女は、さらに草むらの奥へと下がる。
「だだだだ、だっ大丈夫です。そんなわざわざ御影の次期当主様の手を煩わせるなんて」
 御影の名前は魔法使いの世界ではかなり有名なのだ。
 だからこそ少女はここまで恐縮してしまっているのだ。
 しかしいつまでもこんなところでこんな事をしている場合ではない。
「あ〜もう。そっちがその気なら、こっちにも考えがあるぞ」
 司は草むらの中をズンズンと突き進み、少女の手を掴むと半ば強引に手を引き、草むらから脱出する。
「ご、ご迷惑をおかけいたしました。御影様」
「御影でいいよ。難だったら司でもいい。俺は今ここの生徒でただの御影司だからな」
「そ、そそそそんな。御影様に対して大それた事なんて」
「…………聞こえない」
「………う。で、では御影、先輩」
 まあそれが妥当だろう。このままではただのいじめっ子になる。
「それで? 君の名前は?」
「も、申し遅れました。私は塚本真夜と申します」
「塚本? って事はここら辺一帯を取り纏めてる塚本神社の」
「はい。息女であり巫女に当たります。力はあまりありませんが…それで、その」
「ん?」
 真夜が顔を赤くさせ俯いている。
「手…を」
「…手? ……おっとゴメン」
「い、いえ。そんな」
 真夜に言われるまで司は手を掴んだままだったのだ。
「んじゃ真夜ちゃん。君もそろそろ大講堂に向かわないと」
「そうですね。それでは失礼します。御影先輩」
 真夜は礼儀正しくお辞儀をして大講堂へと向かって行った。