今この学園に御影が三人もいるのだ。自宅でもなく仕事でもなく、御影が三人もいる事はかなり稀なケースだったりするのだ。
「んな事よりほれ。さっさと大講堂に行けよ。入学式に遅刻するぞ? もし場所が分からないんだったら、手を引いて案内してやるが?」
「ばっ…ばっかじゃないの! もう子供じゃないし、ここには前に来た事あるし、第一魔法使いが道に迷うとかありえないから! もう! じゃあね!」
 顔を赤くさせ大股でズカズカと立ち去って行く美凪を、手の平をヒラヒラさせて司は見送った。
「さて。入学式まで時間もないし、最後の見回りをするか。まさか遅刻するような生徒はいないだろうけど」
 まあそのまさかが薫だったわけだが。
 もうあれから一年が経ったのだと思うと、早いものである。
「とりあえず、チェックしとくか」
 司は目を閉じ魔力の波紋を学園全体に飛ばす。
「ん? なんだ。この変な反応は」
 魔力のソナーにおかしな反応を二つほど、捉えた。
 一つは少しだけ魔力の反応があるのだが、シールドが張られたり消えたりしている。魔法の構成も稚拙である。
 もう一つは生体反応はないのだが、その代わりに電気ポットぐらいの熱源反応が二つほど、フワフワと浮いている。
「ったく、入学式そうそうに。とりあえず、魔力の反応があった方から、行くか」
 魔力を集中させ地面を蹴り空高く跳躍する。
「あそこか」
 地面に着地し、周辺を見渡す。
「あっれ〜? っかしーな。反応はここら辺からあったんだが」
 しばらく見渡していると、物陰に隠れこちらをジーッと見ている生徒がいた。
「あの君」
「っ!」
 声をかけた途端生徒は怯えた表情で草むらの方へと消えていく。
「……俺、何かしたか?」
 いきなり空から現れ、驚かせてしまったのかも知れない。
 そう思い、出来るだけ優しい声で草むらに向かって話しかける。
「驚かせてしまったんなら、謝るよ」
 どうやら逆効果だったらしく、さらに警戒心を高め、魔法で障壁まで張られる始末である。
「あ〜。心配しなくてもいいよ。俺は二年の御影司って言うんだ」
「……御影?」
 御影の名前を聞いて草むらが、一瞬だけざわめいた。