校内には桜が咲き乱れ初々しいお嬢様たちが、表情を輝かせ校舎へと向かっていた。
「……俺は二年にもなってこんなとこで何をしてるんだろう」
 胸からプラカードを提げて新入生たちを一人迎えていた。
 そう司は去年と同じく木の葉の依頼で、入学式の警備をしているのだ。
 当然、何も知らない新入生たちは司の横を通り過ぎると、何やらひそひそと囁きあっていた。
「何だか切ない」
 一年経とうがなかなか周りは女の子で、男は一人と言う状況には慣れる事が出来なかった。
「くっそ〜。木の葉さんめ。覚えてろよ」
 なんて一人呟いてみたりする。
「おはようございます。司さん」
「おはようさん。ってなんや朝から冴えない顔してんねん」
「司様。おはようございます」
「ん。おはよう。薫さん、美琴、咲枝さん」
 久しぶりに会う三人に挨拶を交わす。
「もしかして司さん」
 薫が胸から提げられているプラカードに気付き、指を指す。
「そゆ事」
「なんや大変やな。まあ頑張りや?」
 言葉とは裏腹に美琴の顔が笑っている。
「美琴さん。司様をからかうものではありませんよ?」
 咲枝が少し真面目な表情を見せる。
「まあまあ。咲枝さん。美琴だって本気じゃないんだし」
「ですが」
「相変わらず、賑やかなのね?」
 聞き慣れた声に四人は振り返る。
「美凪?」
「お久しぶりね? 司」
「美凪ちゃんがここにいるって事はもしかして」
 薫の言葉に美凪は頷いた。
「ええ。お察しの通り、私も今日からセレスティア学園に通う事になりました。神楽先輩」
「んなっ! 聞いてねえぞ! んな事」
 一番驚いていたのは司だった。
「そりゃそうでしょうね? 私だって知らされたのは、つい最近だもの。宗主様から直々の御命令でしたし」
「あんのクソ親父。また木の葉さんと企んで」
「でしょうね? お二人のやりそうなものですもの」
 反論どころか賛同出来る美凪の言葉に、司は肩を大きく落とす。
「………なんだかなぁ」
「そんな事よりもこの状況がとんでもない事だって、分かってるの?」
「……分かってるさ。こんなアホらしい事、気付かない方がおかしいだろうが」