「薫さん?」
 上半身を起こし校舎へと繋がる出入口を見る。
「凄いですよね? さっきまで星なんて見えなかったのに、突然ですよ?」
「え? あ、ああ。そうだね」
 曖昧な返事をしている司を見て、これが司の仕業である事に気付いた薫は、顔を赤くさせる。
「も、もしかして…これって司さんの魔法、ですか?」
「そう聞かれればイエスと答えるしかないね」
「や、やだ! 私ったら勝手にはしゃいじゃって」
「ハハハ。別にいいんじゃない? そんで? 俺に何か要だったかな?」
「え?」
「いやだって俺を探してるようだったから」
「……………あっ」
 ボッと薫の顔が耳やら肩までさらに赤くなる。
「あ、あの…せっかくの後夜祭ですから、一緒にどうかなって思って。つ、司さんが嫌なら別にいいんですけど」
「本当に?」
 わざとらしく尋ねると司の予想通り、薫は不機嫌そうに頬を膨らませる。
「……司さん、意地悪です」
「ハハハ。ゴメンゴメン。謝るから半眼で睨むのは止めて」
「じゃあ隣、座らせてもらっていいですか?」
「ああ。いいよ」
「では失礼します」
 司の横にチョコンと座り星空を見上げる。
「今日はありがとうございました」
「ん? 礼を言われる事じゃないさ。仕事だったしな」
「それでもです。司さんはいつも助けてくれました」
「気にする事ないさ。俺は御影で魔法使いで」
「そして守護者、ですもんね?」
 司の言葉を薫が先行する。
「ん。その通りだ。俺だけじゃない。木の葉さんや美凪。他の御影だってそうさ」
「でも私を三回も助けてくれたのは、司さんだけですから」
「それも当然だな。守護者として、薫さんを守ると誓ったんだから」
「あの…これはわがままかも知れませんが」
「ん?」
「これからも私の事を守ってくれますか?」
「もちろん! 呼んでくれればどんな場所にだって行くさ」
「…………………ありがとうございます」
 ポツリと礼を言うと、体を横に倒し司の体に自分の体を預ける。
「ちょっ! 薫さん」
「しばらくこのままで」
「…………ああ。分かったよ」
 二人は寄り添い合いながらしばらく星空を眺めていたのだった。