時間は昼近く。事件はとうとう起こった。
 数箇所から同時に銃声が鳴り響く。
「やれやれ。やっぱやっちまったか」
 銃声とほぼ同時に念話で木の葉から、依頼内容の変更が知らされた。
 内容は人質の救出及び襲撃犯の殲滅。
 司は心の中でスイッチを切り替える。
 こうなれば司は御影として動く事になる。
 念話で木の葉にいくつかの指示を出す。
「それで? 私は何をしたらいいのかしら?」
 美凪も戦闘体勢へと切り替え司の指示を待つ。
「美凪は俺と一緒に敷地に潜む襲撃犯全員を一人残らず叩く。主犯にはばれずにだ」
「つまり最初に人質の数を減らそうってわけね。となると時間との勝負になるわね」
「大体の位置は俺の結界が起動してるから、把握出来る。それと主犯に魔法使いが数人いる」
 つまり下手をすれば学園内で、魔法戦になる可能性があると言う事である。
「木の葉さんが今主犯の位置を探索してるから、分かりしだい俺はそっちへ向かう。美凪は残りを叩いたら、捕縛結界を展開させ、結界ごとターゲットポイントまで移動して俺と美凪、そして木の葉さんの三人で主犯を挟撃し殲滅させる」
「分かったわ」
「んじゃ早速、行動に出るぞ。……あっ言い忘れてたけど、なるべく俺らが魔法使いだってばれないようにしろよ?」
「分かってるわよ。私がそんなへまをするわけないでしょ」
「うしっ! んじゃこれより俺と美凪は戦略レベルから戦術レベルへと移行。敵を殲滅させる!」
「了解!」
 二人は認識阻害の魔法を使うと一気に跳躍し、襲撃犯たちの元へと向かって行った。
「全く。あいつってあそこまでいったら化け物よね」
 魔法は重複させるほど負荷が強くなる。普通ならば三つほどが限界なのだ。
 分家の次期当主である美凪でさえ、今使用している認識阻害、肉体強化、探査魔法。そして敵を倒すための攻撃魔法の四つが限界である。
 司はそれに加え学園の結界に通信魔法、そして攻撃魔法の七つもの魔法を重複させている事になる。
 魔法一つで一人分の精神が生まれる事になる。
 そして美凪が覚えている限りでは、司は十もの魔法を重複させた事があるのだ。
 司の非凡さがありありと語られている事が、これで分かる。