君は僕の酸素



20XX年8月14日

その日は天気予報によると、今年一番の猛暑日で僕たち白木家が避暑地に行くにはぴったりな日だった。



「あっつー…」
「ねぇ、まだ着かないの?」
「おなかすいたー」
「はいはい、あとすこしだからね」



ぎゃあぎゃあと末の弟二人が騒ぐのを美映(みえ)さんがなだめるなか、僕はみんなとは違った汗をかきながら別荘への到着を心待ちにしていた。


眉間にしわを寄せ貧乏ゆすりが激しくなる。

これは、一番上の兄の嘉人(よしと)が苛立った時に態度にでる癖だ。

うるさい弟達と、クーラーのきかない車内にイライラしているんだろう。

本人は気づいているのかわからないが、兄さんを恐れている僕にとっては、いつ自分に怒りの矛先が向くか分からないからすごく緊張する。


「暑い…」


つい、ぽろりと出た言葉を幸弘(ゆきひろ)さんが拾うと気を利かせて窓をあけてくれた。

びゅううう、と顔に吹く生ぬるい風。

兄さんはうっとうしそうに顔をしかめ、弟達は興奮しながら笑っている。