【完】初めての恋は――。

「ねー、真美?」

「ん?何?」

「好きって何?どんな感じなの?」


自分で考えても、分からないものは分からない。


真美なら分かるかと思って、聞いてみたけど、間違いだった?



「…………」

一向に真美から言葉が出てくることはなかった。


完全に、一時停止状態だ。



「真美?真美?聞いてる?」


「……可愛いー」


……あっ、ヤバイ。そう思った時は、もう遅かった。


いつものごとく真美に抱きつかれていた。


「ちょっと離してよ」


「いやー」


私が真美を剥がしにかかると、真美は更にきつく抱きついてきた。


やめてよね、暑苦しいし、騒ぐと目立つんだから。




「……はぁー。女同士で何やってるんだよ。何の話してたんだ?」


溜め息した方を見ると、呆れているらしい弘樹が立っていた。


何の話って、前田先輩とかの話なんだけど……なんか嫌だ。


この話、弘樹には聞かせたくない。


「その女同士の秘密」


一瞬、真美がしまったという顔をした気がするけど、すぐいつもどおりの綺麗な笑顔に戻った。


今のは気のせいだったのかな?


けど、真美の言葉に助かった気がする。



「そう、そう、弘樹には秘密―」


自分自身でもよくわかっていないのに、人に知られるのは嫌。


とりあえず、このよく分からない感情とちゃんと向き合おう。


それだけは、はっきりと思った。