【完】初めての恋は――。

唯が離れた席に移ったため、私の隣の席が空いてしまっていた。


ボーっと問題集を見つめていると、隣からガタっと音がして、ハッとした。


「……弘樹?」


「なー、ここ教えて」


隣を見ると、数学の問題集を差し出す弘樹がいた。

弘樹が聞いてくるなんて珍しい。


「え、どれ?あー、これね。これは……」


数学は私の得意科目。


唯一私が弘樹に勝てる科目だから。


いつもと逆の立場が嬉しい。



「おー、サンキュー。もう分かった」


私が軽く説明するだけで、弘樹は分かってしまっていた。


せっかく優越感感じていたのに、理解が早くて少しつまんない。