女湯の暖簾を潜ったところで、ばったりと出くわした。


私たちと同じで、お風呂に入っていたであろう前田先輩に。


前田先輩は1人だった。


「あれ、お前らも今風呂?」


「今あがったところ。和也も?」


前田先輩の質問に、私の前を歩いていた小百合先輩が答えていた。


「俺も今入っていたところ。あーあ、はら亜美、髪ちゃんと拭けよ。風引くぞ」


急に近づいた距離に、反射的にビクリと体が反応してしまった。


イケメンにこんなに近づかれて、動揺しない人がいたら見てみたいよね。


驚きすぎて、反応が非常に遅くなってしまった。



「和也、亜美が困ってるでしょ。私が代わるから」


前田先輩からタオルを奪って、小百合先輩が私の頭を拭き始めた。


いや、助かったよ?

けどさ、髪くらい自分で拭きますとも。


拭いてもらう必要はないからね。




「……代わらなくても大丈夫です。自分で拭けますから」


少し屈んで、小百合先輩の手を交わすと、自分で髪の毛を拭きながら、先輩たち2人に向き直った。


「ごめんって。ほら、拗ねないの。亜美って、なんか構いたくなるんだよね」


小百合先輩の言葉に、前田先輩も「そうそう」と頷いていた。


全然納得いかないんですけど。


「やっべ、もうこんな時間か。先輩たち疲れて一度寝ちまったから、起こすように頼まれてたんだった」


時計を見てから、前田先輩は急に慌て始めた。


「じゃあ、また明日な。2人ともおやすみ」


そして、バタバタと帰っていった。



「私たちも帰ろうか」

「そうですね」


私たち2人も部屋へ戻ることにした。