「終わったか?」
しゃがみこんで泣いていた私は、近づいてきた人物に気付かなかった。
「……弘樹。何で?」
「ん?待ってても帰ってこなかったから迎えにきた」
なんでこんなタイミングで来るんだよ。
こんな姿見られたくなかったのにな。
あれ、でも真美は?
「真美から伝言。先に帰るから報告は電話でだとよ。俺に亜美よろしくって帰っていった」
「真美の裏切り者―。慰めてくれるって言ってたのに。ていうか、こっち見ないでよ」
泣いている姿を見られるのが嫌だったし、なんか恥ずかしい。
こんな弱っている姿なんて……
顔を見られたくなくて俯いていると、一瞬躊躇われた腕に気がついた。
「今日は頭撫でるの許してもいいよ?」
さっきの前田先輩の感触を忘れたかった。
安心できる弘樹の手で掻き消して欲しかった。
だって辛すぎるだけだから。
ごめんね、今日だけ弘樹のこと利用させて。
「素直に慰めて欲しいって言えよな。可愛げねーな」
「いいよ、弘樹に可愛いなんて思ってもらおうとしてないから」
「はいはい。もう泣き止んだか?そろそろ帰るぞ」
私の荷物を持って、勝手に歩き始めた弘樹を慌てて追いかけた。



