先輩は私に呼び出された時点で予想していたのか、そんなに驚いた素振りを見せることはなかった。


「ありがとう。でも俺には好きな人が「小百合先輩でしょ？」



さすがにこれには驚いたようだ。


そして、

「気付いてたのか」

申し訳なさそうに先輩は笑った。


そんな顔させたい訳じゃないのに。


困らせたい訳じゃないないのに。



「どれだけ先輩のこと見てたと思うんですか。先輩の好きな人くらい、嫌でも分かっちゃいますよ。いつも2人一緒にいましたしね」


先輩の口から、はっきり聞くのは辛かった。


私には前田先輩の言わんとすることがわかっていた。


前田先輩が小百合先輩を好きなことも。


小百合先輩しか見ていなかったことに気づかないはずがなかった。


それほどまでに、前田先輩のことを見ていたのだから。


笑顔でいなきゃ。


また先輩を困らせてしまう。




「先輩が小百合先輩のこと好きなのは気づいていました。けれど、それでも、先輩が卒業しちゃう前にどうしても伝えたくって」


私は頑張って笑った。