「そういえば、先輩たちはもう受験校決めたんですか?」


私を一気に現実へと引き戻す話しを、弘樹が始めてしまった。


聞くに聞けなかった話。


これを聞いてしまうと、先輩たちが卒業してしまう日が近づいている事実を、突きつけられる気がするから。


ここまでくれば、意を決して、聞くしかなによね。



「私も気になりなす」


前田先輩の目を見て話すなんて恥ずかしいから、前田先輩には背を向けて、小百合先輩に尋ねてみた。


「もう決めたよ。「俺ら菊本高校受けるよ」


……びっくりした。


折角、背を向けてのに、意味ないじゃないですか。


小百合先輩と話していたら、いきなり私の頭上から声が聞こえた。



「ちょっと、私が話してるんだから和也が勝手に言わないでよ」


「いいじゃん、どっちが行っても同じなんだし。なぁ、亜美?」


なあと聞かれても、心臓の音が大きすぎて、まともに答えられそうに無かった。


でも、ちゃんと答えなくてはと思い、少し深呼吸してから答えた。


「でっ、ですね」


少し、声が裏返った気もするけれど、ごまかせているとは思う。


先輩近いから。


近くて振り向けないよ。


心臓がうるさい……聞こえてないよね?



「2人とももう決めたんですね」


冷静に答えられない私の代わりなのか、弘樹が答えてくれていた。


弘樹、ナイス、助かった。