シュートだって何本も決めるし、

相手だって何人も抜かせるし。


……だけど、素直に上手いって言えないのは、

あたしが太一の浮気相手だから。


別に、浮気相手でも上手いくらい

言ってもいいだろう。


……でも、あたしのなかでは、

上手いやかっこいいなんて絶対に

言っちゃいけない決まりがある。


……だって、浮気相手のくせに、

彼女きどりに『太一、上手かったよ』とか

『太一、かっこよかったよ』なんて

言えるはずがない。



……浮気相手なんだから……。







……あたしはあの日から三週間たった今でも

太一のことが、好きなままだった。



こんな気持ち消さなきゃって、

思うたびに、太一への想いがふくれあがっていった。



だけど太一は今まで通り、あたしに接してくる。

今まで通りの、良き友だち、として。