王に愛された女 番外編





 鏡の中の自分に、ミィナは思わず見とれた。

 長い銀髪、赤い瞳。

 これは父親譲りである。

 輪郭と鼻、口、それから華奢な体格は母譲りだ。

「…この服もいいけど…やっぱり、こっちかしら」

 ミィナは鏡の傍に脱ぎ散らかしたピンク色のドレスを掴んで、体の前に当てた。

 ミィナの父は、ミィナが生まれる前に王宮の重臣の座についた。

 彼は元々、貧乏人の住む地域、ガトヤに住んでいた。だが、彼は王宮内で最も役職の高い重臣の座に辿り着いたのである。

 彼の身分が高いことはミィナの誇りであるが、彼の努力もまた、ミィナにとっては友達に自慢できる誇りなのである。

「…やっぱりこっちね」

 ミィナは鏡の中の自分が着ている、淡いブルーのドレスの裾をつまみ、クルリと回ってみた。

「ミィナ、準備はできた?」

 母の声に、ミィナは扉を開けた。

「えぇ、お母様!仕度できましたわ!」

 今から、ミィナと母は父の仕事場である王宮へ行くのである。

 ミィナにとっては初めてのことで、行く前からドキドキしているのだった。