カイルは頭の中をフル回転させた。

 今、カイルの目の前には背の高い塀がある。

 その塀を越えようとカイルは考えているのだった。

 塀の高さは四メートル。

 カイルの背は一メートルと五十センチ。どんなけ頑張って背伸びしても塀は越えることができない。

「…よし、こうなったら」

 カイルは塀のあたりを見回した。

 近くには塀より背の高い樹が生えている。

 その樹は、「夫婦樹」と呼ばれている樹で、カイルの父の前の国王と王妃の生き様からつけられた名前だ。

「この樹を上れば塀を越えられるぞ」

 カイルはそう言って、樹のごつごつした幹に手をかけた。

 幹のごつごつしたでっぱりに右足も乗せ、左手を少し上のごつごつにかけた。

「……くそ、この服じゃ上れないな」

 カイルは樹から下りて自分の服を見下ろした。