ホストを知らない?
クリスティーヌは、たった今、目の前の男が口にした言葉を信じられない思いで受け止めた。
ホストとは、この国の娯楽施設の一つで、女人が男に愚痴を聞いてもらったり遊んだり…そんな場所だ。
施設がつくられた当初は客が少なかったが、今では繁盛して分譲店もあるほどだ。
「…ホスト、知らないんですか…?」
クリスティーヌはもう一度尋ねる。
「知らない」
なら、彼はホストではないのだろう。ホストであることを隠す為の嘘だとも考えられるが、それはないだろうとクリスティーヌは否定した。
なぜなら、ホストの店員は自身の仕事に誇りを持っていて、隠したりするわけがないからだ。
「…なら、あなたは一体何なんですか?泥棒でないのなら、何故塀を越えようとしていたんですか?」
クリスティーヌは一息にまくし立てた。
目の前の少年が戸惑った顔をする。
「やましいことがないなら、答えられますよね?」



