カイルは塀の方に手を伸ばしかけ、その動きを止めた。

「…え?」

 塀の方に手を伸ばした途端、塀の向こうに誰かがいることに気付く。

 彼女は金色の髪と緑の目をしていた。

 着ている服からして、ムロヤの住人であることには間違いない。

 王宮の外に出たことがないカイルは、それくらいのことしかわからなかった。

「ど、泥棒…!?」

 彼女の口から、鈴のような声が漏れ出る。

「はぁ?」

 女は嫌いだが、王子である自分を泥棒呼ばわりする彼女に、カイルは苛立ちを覚えた。

「泥棒……だよね?」

 彼女は自分の目を疑っているようだった。

 勝手に納得してんなよ。

 カイルは彼女を見下ろして、ため息をつく。