ただ、怖かった。

 数時間前、父が死ぬ直前に

――ルークを殺し、その知らせを聞いて駆けつけた前国王と前王妃を殺すのよ。

 重臣の妻たちの中で権力を持つ、マリィと親しかったルーザがそう言ったのだ。

 殺人計画だ、そう気付いた時には既に遅く、マリィはルーザに見つかった。

――アンタ、聞いてたのかい。

 何も言えなかった。

 あんなに優しかったルーザの、変わり果てた姿にただ困惑した。

――あたしが親しくしていたオマエを、簡単には殺せやしない。…この計画のことを黙っていてくれるなら生かしといてやるよ。

 そう聞いて、幼いマリィは頷く。

 そのあとに、マリィは恐ろしい話を聞いてしまった。

――前国王と前王妃は殺さなくてもいいね。ただナイフで切り付けて、娘のクリスティーヌを困惑させればいい。パニックを起こしたあの子に、呪いをかけるのは簡単な話さね。

 クリスティーヌ、それはマリィの好きなテアンと近所の娘だった。

 直接喋ったことはないが、彼女のことを好きだと兄が言っていた。

 ルーザは、兄の大切な人を二人も奪う計画を立てているのだ。