ちゃんと話せ、そう怒鳴りかけたカイルの服を誰かが掴む。

「…?」

 カイルは服を引っ張った者を見た。

 クリスティーヌがカイルの服を小さな手で握りしめ、口を真一文字に結んだまま首を振った。

「…クリスティーヌ…」

「ダメですよ、王子様…。そんな頭ごなしに怒鳴っては」

 クリスティーヌのか細い声に、カイルはキョトンとさせてから、顔が熱くなるのを感じた。

 クリスティーヌが、自分のことを気遣ってくれたことが嬉しかったと同時に、男である自分が好きな女に注意されたことへの羞恥が心を支配する。

「すまない」

 カイルはアリシアに頭を下げた。

「い、いえ…悪いのは私ですから」

 アリシアが呟く。

「話しにくいかもしれないがアリシア、何があったか教えてくれ」

 カイルは言い聞かせるようにゆっくり言った。

「…はい…」

 彼女が頷く。


「実は、王様のおられる部屋が、突然襲われたのです…」