「どうした!?何があったんだ!?」

 カイルは大きな声で周りに聞きながら王宮へ向かう。

「王子様!!」

 父の世話役、アリシアが近寄ってきた。

 彼がクリスティーヌを見て一瞬眉間に皺を寄せたのを、カイルは見逃さない。

「クリスティーヌは、俺の好きな女だ」

「…あぁ、この方が…」

 プライドの高いアリシアが、庶民に“この方”なんていうのは珍しい。

 さっき彼女が言いかけた“神の子”に関することを知っているとみてまず間違いないだろう。

 だが、今はそんなことよりも――。

「何があった!?」

「それが…」

 アリシアは俯いたまま、何も言わなくなる。

「おい!!」

「王様が――」

 アリシアが口元を袖で押さえながらゆっくりと言った。

「父上が!?」