帰ってきたクリスティーヌは、そわそわしてばかりいた。

「どうした?」

 オラシオンが聞くと、彼女は肩を震わせ、それから首を振る。

「な、なんでもないの」

「そうか」

 なんでもないなら、何故彼女はあんなにそわそわしているのだろうか。

 オラシオンは、少しからかってやろうと思い

「好きな男でも、できたのか?」

 冗談で聞いた。

 すると、クリスティーヌの白い顔が、みるみる真っ赤に染まっていった。

 まさか、本当に好きな男ができたのだろうか。

 オラシオンは、何故か不安な気持ちになる。

「どんな男なんだ?」

 だが、彼女は何も答えない。

 ただ首を振るだけだ。

「まさか、まさかとは思うが、」

 オラシオンは半信半疑で口を開く。