クリスティーヌがバッと顔を上げる。

「愛の、力…」

「もうこの世にはいないらしいんだけどさ…俺の父さんの前に王様と王妃様だった人は、身分の違いを乗り越えて結婚したんだ…」

 カイルが言った。

「前国王が王族で、前王妃がガトヤ出身の奴隷だった…」

「ガトヤ?って、あの南側の土地…?」

 クリスティーヌが聞く。

「そうだ」

「……でも、私にできるのかな…愛の力で乗り越えるなんて…」

 不安そうに呟く彼女に

「俺がついてるから」

 カイルが告げる。

「…少しの間、考えさせてください」

 クリスティーヌはそう言って、カイルから離れていく。

「わかった。返事は、辛抱強く待つよ」