「だから傍にいてくれ」

 カイルの言葉に、イアルはハッとした。

 イアルは後宮の奥で、カイルとクリスティーヌの会話を聞いていた。

「…でも…」

「クリスティーヌ、オマエのことが好きなんだ…」

 カイルの告白に、彼女は頬を赤らめる。

 これはカイルの勝ちだな、とイアルは確信した。

「…私、庶民ですから…。王子様と一緒になることはできません…」

 彼女のか細い声が答える。

「なら、オマエが貴族の娘だったら。俺と一緒になれたのか?」

 カイルが問いかけた。

「……はい…」

 クリスティーヌの答えに、イアルの確信が現実へと変わる。

「…そうか…。いつだったか、俺の信頼する重臣がこんなことを言っていた」

 カイルが言うのが聞こえた。

「恋に身分など関係ない、と。身分の差など愛の力で乗り切れるって言われた」

 フリーゼル伯爵のことだな、とイアルは思った。