王の籠を見た瞬間、クリスティーヌはあることを思いついた。

 今、父はいない。

 つまり、今ならこっそり王宮へ遊びに行くこともできるわけだ。

 クリスティーヌは内心ニヤリと笑って、民衆の中から抜け出した。

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 王宮に近づくにつれ、城下町の市場の賑やかさは鳥のさえずりほどに小さくなった。

 クリスティーヌは王宮の夫婦樹の傍まで行き、どこか塀が低くなっている所はないかを捜した。

 というのも、王宮の敷地に入るための門には二人組の門兵がいて見張っているため、うかつには近づけないのである。

「…どうしよっかな…」

 クリスティーヌは、塀のすぐ傍にある夫婦樹を見上げた。

 その時である。

 不意に夫婦樹の枝がガサガサと音を立て、枝と枝の隙間から一人の少年が顔を出した。