「なんでクリスティーヌは、俺にこの花を贈ってくれたんだ…」

 カイルはボソッと呟く。

 綺麗な花は、カイルに彼女のことばかりを思い出させる。

「…見たくない、この花は、見たくない」

 カイルは花瓶を持ち、部屋の戸棚の一か所に入れた。

 日の当たらないこの戸棚の中に入れておけば、この花はいずれ枯れてしまい、カイルも彼女のことを思いださなくて済むのだろう。

「俺は、好きでもない女と結婚して、子供産んで…それで死んでいくんだ…」

 ため息まじりに呟いたところで、部屋の扉をノックされた。

「誰だ」

 カイルはそう聞く。

「ロッドです。王子様、そろそろ勉強の時間ですが」

「わかった。すぐに行く」

 カイルは立ち上がり、部屋のドアのところまで向かった。

「王子様、明日はとうとう大晦日ですね」

 ドアを開けたところでニヤニヤしたロッドが言う。

「そうだな」