後悔。

 その文字がカイルの頭の中で点滅している。

 何故、大晦日の晩のパーティの招待状を彼女に送ってしまったのだろう。

 どうせ、叶わない恋なのに。

 自分は王子で、彼女は庶民だ。

 身分違いの恋など、叶えられるわけがない。

 なぜなら、彼女を王妃に迎えてしまえば、彼女は権力争いに巻き込まれてしまうからだ。

 最初は純粋な恋だったのに、とカイルは思った。

 なのに、いつの間にか恋は禁断へと変わっていた。

「…畜生…っ」

 カイルは床に拳を叩きつけ、それから机に飾ってある瑠璃色の花瓶を見た。

 そこに挿されているのは薄桃色のハナミズキだ。

「ハナミズキ…か」

 カイルは呟いた。

「花言葉は、“私の想いを受け止めて”だっけ…?」

 誰が誰に何の想いを受け止めてほしくてこの花言葉をつけたのだろう。

 カイルはそう思った。