「オマエも十四だ。王族の息子、王の跡継ぎとして王妃を迎えることのできる年頃だ。どうだろう、この機に婚約を考えるのも悪くまい?」

 あぁ、やっぱり。

 カイルはそう思った。

「父上、俺にはもう、心に決めた女がいるんです…」

 カイルは蚊の鳴くような声で言った。

 塀を越えようとしたことや、先生をクビにしようとしたことを除けば、カイルが父に異議を唱えたのは初めてだった。

「心に決めた女?それはまさか、塀の向こうの人間ではないだろうな?」

 その言葉に、カイルの心臓が大きな音を立てる。

 もしかして、彼は知っているのだろうか。

「それは…」

「なら、やめておけ」

 父がいつになく厳しい声で言った。

「え?」

「オマエは、何の関係もない少女を権力争いに巻き込むつもりか?」

 父の言葉に、カイルはハッとした。