半ば嬉しく、半ば驚きだった。
カイルの好きな女は、クリスティーヌだと思っていたのだ。
イアルは、自分の恋のライバルが減ったことが嬉しかった。
まさかカイルが重臣フィオーレの娘に告白をするなど、イアルにとっては予想外だったのだ。
イアルは窓辺のハナミズキを眺めながら、大きくため息を漏らす。
あの噂は、本当なのだろうかという疑問がイアルの心に浮かぶ。
カイルは、本当にミィナ嬢に告白したのだろうか。これはイアルを惑わす為の嘘だったとしたら?
イアルはそう考え
「それはないか」
と呟いた。
カイルはそんなことをしない。
そう思ったのだ。
「…戦うなら、正々堂々だ。そうだろ、カイル…」
イアルはハナミズキにそう問いかける。
空を見上げると、ここ数日なかった雲一つない快晴だった。