ドックンッ

 ロッドに顔を覗き込まれ、カイルは我に返った。

「な、なんでもないっ」

 カイルは慌てて首を振った。

「…何か意味ありげですが…まぁ、なんでもないということにいたしましょう」

 面白おかしそうにロッドは言った。

「なんだよ…」

「…王子様、そちらの花が何かは知っていますか?」

 ロッドが手紙に添えられていた花を指さした。

「知らないな」

「…それはハナミズキという花です」

「ハナミズキ?」

 ロッドの言葉に、カイルは首を捻る。

「はい。花言葉は“私の想いを受け止めて”でございます。まぁ、クリスティーヌ様が王子様のことを想ってその花を送ってきたのかはわかりませんが」

 もしかしたら脈ありかもですよ、と言ってロッドは花に背中を向けた。

「脈あり?それってどういう…「おっと、用事があるのを忘れていました。ではこれで失礼」

 ロッドはわざとらしく腕時計を見て部屋を出て行った。

「…わかりやすい奴だな…」