まるでミィナの呟きが聞こえたかのようなタイミングで、少女がミィナを見た。

 ミィナに向かって、彼女が頭を下げる。

「先ほどは、使用人がすみませんでした」

 謝罪する時の態度までもが、ミィナは気に入らなかった。

「い、いいのよ、気にしないで」

 ミィナは“いい人”を装って顔の前で手を振った。

「彼女も急いでたんだから。前を見てなかった私も悪いんだわ」

 少女は顔を輝かせ

「ありがとうございます!」

 と頭を下げた。

「いいのよ」人が見てるんだから、そんな頭ばっかり下げないでよ。恥ずかしいじゃない。

 ミィナはそう思ったが、不機嫌な態度が顔に出ないように気を遣った。

「わ、私、急いでるから。じゃあね」

 その場から逃げるようにミィナは彼女に手を振った。

 最悪だとミィナは思った。

 彼女との出会いも、彼女の態度も、すべてがだ。

「大嫌い。許すものか」

 憎々しげにミィナは呟いた。