髪留めを売っている店の傍で、先ほどぶつかったどこかの家の使用人を見かけた。

 いいことがあったのか、彼女は嬉しそうな顔で足早に歩いていく。

 使用人のミッシェルには、彼女を許したと言いはしたものの、内心は彼女に対する怒りではらわたが煮えくり返る思いだった。

「…何よ、あんな嬉しそうな足取りで歩いて…」

 ミッシェルには聞こえない小声で、使用人に対する不平を呟いた。

「ソルティア!!」

 鈴のような声に、ミィナは使用人から目を逸らした。声のした方向を見る。

 金色の髪の少女がプランターを抱えて例の使用人のもとへ駆け寄って行く。

「…あの女の使用人ね」

 ミィナは呟いた。

「ねぇソルティア、目当ての髪留めは見つかった?」

「気付いてらしたんですか」

「うん、父様に言ってるところを聞いたの!」

 金髪の少女がにっこり笑う。

 使用人にも腹が立ったが、幸せそうな少女にも腹が立った。

 いかにも純粋といった雰囲気で、自分と正反対の少女に嫌悪感を抱く。

「何よ…天使みたいな笑顔振りまいて…」