【主人公】
彼女には、あの人のような幻想的な言葉を紡ぐなんて出来ない。あの人のような哲学的な台詞を綴る事も出来ない。
彼女は作家であった。否、作家である。
しかし、いつまで経っても彼女の本は白紙のままで、彼女のペンは動かなかった。春が過ぎ緑が輝いても、澄んだ寒気に満天の星が瞬いても、それでも頁は埋まらず、時の移ろいだけが彼女を残し去って行く。
結局、彼女は物語を完結させる事なくペンを置いた。
そして一人の作家は、自身のこよなく愛する者の手によって、永久に夢幻を彷徨ったという。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
設定されていません
読み込み中…