【そうやって君はわらう】



泣いたら負けだ、と自分に言い聞かせる。仲間外れがなんだって言うんだ。あんな奴らと一緒にいたって、どうせ楽しくなかったじゃないか。

条件反射的に溢れ掛けた涙を懸命に堪えて、オキカは空虚な世を睨み付けた。胃はとんでもなく重たくて、手足は鉛のようだった。水圧でも掛かっているのかと思う程、耳が押さえ付けられる感じがした。心臓の鼓動が頭の中に入り込んで来る。唾液の飲み方が分からない。

もっと卑怯になれたなら、或いはもっと脆弱だったなら。こんな風に騙し騙し生きる事もなかっただろうに。どちら側にも踏み出せない自分の甘さに、心底虫酸が走る。

このまま己の嫌な部分だけを抉り取ってしまえたらどんなに良いだろう。

(――嗚呼、いや)

膨らみつつあった感情が、みるみる萎んで行くのが分かった。

(何も残らないや)

何かが砕ける音がした。吐き気がした。