【息も出来ない】



多分僕は無に恋してて、その癖何もかもを愛してた。

壊れるから手を伸ばすのか、求め過ぎて崩れるのか。答えが知りたい訳じゃない。

ただひとつだけ真実なのは、あの日確かに幸せでしたと、そう伝えたいこの衝動。届きますようにと願っては、ガムと一緒に丸めて捨てた。

きっと僕には見えない世界を、彼らはそこに描いたんだろう。

僕には遅すぎた。始まってすらいなかったのかも。望むには自惚れ過ぎた。背を向けるには卑屈過ぎた。

僕は全部を飲み込んで、そのまま口を噤んだ。

振り払ったあの手は今、一体何を掴もうともがいているんだろう。

いつか墓場で語り合おうよ。