そんな事、私が一番知っている。

でも、だからこそ――。



世界は私に忠実だ。
私が本気で願えば、大きな鎌が現れる。



私はただ夢中で柄を握り、振り抜くだけで良い。

重さのないそれは、いとも簡単に“私”の首を斬り裂いた。カッターで紙を切るのと同じ。鉛筆で文字を綴るのと同じ。電気のスイッチを入れるのと同じ。さも当たり前のように。

ごろり。眼前の女の首が華麗に宙を舞って、丸めたティッシュみたいに転がった。

残された身体がゆっくりと傾く。盛大に飛沫を上げて、それは飲み込まれていった。空から滴る雫と共に。

飛び散る水飛沫。

煌めく。
弾ける。

追悼の涙なんかじゃない、絶対に。



身体が沈んで消えても、首だけはそこに転がったまま。

見開かれた両方の眼球が、私を見ていた。濁った瞳に、私はどう映っているのだろう。

私は今、どんな顔をしているのだろう。



「私なんか大嫌いだ」

嗚呼、私が死んでゆく。
こんなにも渇望している癖に。



果たして私は、あと何度、私を殺せば済むのか。



「それじゃあ、さよなら」