「…先に、戻る。」



私を解放すると、オフィスに戻っていった源。

給湯室のドアが閉まり源の足音が遠ざかったのを確認してから、私はその場にしゃがみこんだ。



「さすがにキッツいなぁ…。」



仕方のないことなのかもしれない。

それでもさすがに、嫌だなぁ…。


これまでは社長室に呼び出されて、社長の世間話に付き合う程度だったのに。

それくらいなら、全然、平気だったのに…。



「……はぁ。」



私はただ、こうしてヤキモキするしかできないの…?

そんなの…。


膝を抱えて俯くと、ギュッと目を閉じた。



「誰かいますか? って、うわ、陽萌!?」



不意に扉が開く音がして、上から声が降ってきた。

顔を上げると慌てた様子の晋ちゃんがいて、しゃがみこんだ私の顔を覗き込んできた。



「大丈夫? どうしたの? 具合悪い?」

「……晋ちゃん…。」

「………陽萌?」

「晋ちゃっ…。」



晋ちゃんを見たら、なんだか安心した。

だから我慢していた涙が溢れてしまって、少し晋ちゃんを困らせてしまった。