「源くんと私の娘が見合いをしたことは知っているね?」

「…はい。」



……どうして。



「単刀直入に言うが、源くんと別れてはくれないか?」



サッと踵を返すと私を真っ直ぐに見て、しっかりとした口調で言った。



「…まさか…。」

「ん?」

「全部……、全部、社長が…。」



ここ数日、ずっとそうんじゃないかって思ってた。

だけどそんなくだらないことするはずないって、否定し続けていたのに。


この物言いを聞いていると、否定し切れなくなる。

だって、辻褄が合いすぎる…。



「あぁ…、たぶん、そうだよ。」



私の希望は、その一言で打ち砕かれる。



「恐らく君が思っている以上に、ね。」



社長は椅子を引いてデスクに腰掛けると指を組み、その上に顎を乗せた。



「腰を下ろすといい。」

「……失礼します。」



促されるままに応接用のソファに腰掛けると、その柔らかさに思わず声が漏れそうになった。



「それにしても、源くんといい君といい、本当に優秀な社員だ。私は誇りにすら思うよ。」

「…ありがとうございます。」