「俺、ミナトさんに聞いたんだ。」

「湊まで知ってるんだ~…。」



何だか、周りから固められていってるような気分になるなぁ…。

違うのは分かってるんだけど…。


思わず大きな溜め息が出てしまった。



「本当なのか…?」

「…源が海外研修に行ってるから分からないんだよね…。」

「訊かねぇのか?」

「うーん…。帰って来たら話してくれるみたいなこと言ってたから、待とうと思って。」

「……そうか。」



まだ半月も経ってない。
狙ったように流れ出したこの噂。

何が起きてるんだろう…。



「ミナトさんも心配してたぞ。」

「あはは、情けないなー。元彼に心配されるって…。」

「…溜め込みすぎんじゃねぇぞ。」

「うん、ありがと。」



大丈夫だと言うように微笑むと、煌もぎこちないながらも、笑顔を返してくれた。



「それじゃ、俺もう行くわ。」

「うん。じゃあ、またね。」



煌と別れると、オフィスへと急いだ。


胸に抱えるは不安と願望。

事の真偽に対する不安。
事が偽りであって欲しい願望。



そんな私の心の奥底では、源と家族になりたい。そんな願望が、息を潜めていた。